この法案は地域の自主性・自立性を高めるため、地域からの提案に応える形で13法律を一括改正するというものです。この13法律の中のひとつに
「社会教育法、図書館法、博物館法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律」 公立社会教育施設(博物館、図書館、公民館等)について地方公共団体の判断により、その所管を教育委員会から首長部局へ移すことを可能にする。
があります。この改正案は、観光や地域振興等を目的とするもので、図書館の社会教育機関としての使命を軽視するおそれがあり、多くの問題点を含んでいます。
図書館問題研究会や日本図書館協会もこの法案に反対の意見を表明してきました。
図書館友の会全国連絡会も図書館には適用しないよう、内閣総理大臣、内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(地方分権改革)、文部科学大臣の4名に宛てた要望書を提出しました。(下記に添付)
当会も賛同者に名をつらねましたが、5月末に参議院も通過し成立してしまいました。関係皆様の働きかけの結果下記の付帯決議がついたことが少しの救いです。
(附帯決議)
五 地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管する場合にあっては、社会教育の政治的中立性、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映、学校教育との連携等により、多様性にも配慮した社会教育が適切に実施されるよう、地方公共団体に対し、適切な助言を行うこと。
七 本法の公立社会教育施設に関する規定の施行後三年を目途として、その施行状況を検証し、必要があると認める場合には、社会教育の適切な実施のための担保措置等について、所要の見直しを行うこと。
※第9次地方分権一括法の概要 ⇒ 内閣府のHPに掲載
平成31(2019)年3月25日
内閣総理大臣 安倍晋三様
内閣官房長官 菅義偉様
内閣府特命担当大臣(地方分権改革) 片山さつき様
文部科学大臣 柴山昌彦様
図書館友の会全国連絡会 代表 福富洋一郎
「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の
整備に関する法律案」(第9次地方分権一括法案)に係る要望書
図書館友の会全国連絡会は、公立図書館の振興発展を支援するため、全国各地で活動を行なっている市民団体です。
3月8日に閣議決定された、この法律案に関して、次の問題点、理由により公立図書館には適用しないことを求めます。
ご多用のところ恐縮ですが、4月8日までに図書館友の会全国連絡会に文書でご回答ください。
1 公立図書館の所管を教育委員会から首長部局に移管することについては、昨年、文部科学省の中央教育審議会で検討され、平成30(2018)年12月21日の「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申)」(中教審第212号)で、「特例措置」として厳しい留意点を明示しています。今回の一括法案では、「特別措置」であるとの説明がないので、地方公共団体が、公立図書館の社会教育機関としての使命を重視せずに安易に移管するおそれがあります。公立図書館の所管を首長部局に移管できることを可能にしないでください。
(1) 社会教育法 第8条の2、同8条の3
限定した事項にのみ、首長は教育委員会に意見を聴くか、教育委員会が首長に意見を述べるだけとなっていて、首長に誤りがあっても正すのは困難です。
(2) 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第33条第3項
限定した事項にのみ、首長は教育委員会に協議するだけとなっていて、首長に誤りがあっても正すのは困難です。
2 公立図書館を首長が所管することになった場合、今回の一括法案では図書館法も改正することになっていますが、その必要性は薄くかえってデメリットになりますので、改正しないでください。
(1) 図書館法 第8条
総合目録の作製、貸出文庫の巡回、図書館資料の相互貸借の窓口を首長にすることを認めていますが、このような図書館に関する実務は、これまでどおり教育委員会にしてください。
(2) 図書館法 第13条第1項
公立図書館職員の任命を首長としていますが、専門性の継続の必要性から、これまでどおり教育委員会にしてください。
(3) 図書館法 第15条
図書館協議会委員の任命を首長としていますが、社会教育の自主性から、これまでどおり教育委員会にしてください。
3 「図書館」は、「教育機関」です。生涯学習の拠点である図書館は、介入や干渉に左右されてはなりません。教育委員会の責任で設置し、直接、管理運営される図書館である必要があります。中立性と公平性、専門性が継続され、市民の声が届きやすくなるように、首長部局から独立した教育委員会において、公の責任のもと、直接、管理運営されるようにしてください。
要望書PDFはこちら ⇒ 要望書(移管問題)